Interview 01

今季のヘア/ファッションを
トップクリエイターはどう考える?

Ayaka Endo /
Yusuke Morioka

職種は違えど、ファッションの現場で活躍するクリエイターたちの多くは、客観的なファッション分析とはひと味違ったリアルな意見を持っている。そうした独自の鋭い視点を知ればきっと、今季のテーマ「Destiny Mix」をより多角的に感じることができるはず。

今はちょうど間というか、トレンドが徐々に変化している時期 ―― 遠藤彩香

もう少しプラスアルファの何かを欲しがっている感じですね ―― 森岡祐介

――ともにロンドン在住でファッション撮影に携わられ、日頃からいっしょに仕事もされているおふたりにお聞きしたいのですが、今のファッションのムードやトレンドをどのように捉えていますか?

遠藤彩香(以下E) : 少し前までは90年代のストリートカルチャーをベースにしたスポーツミックスが多かったりしたんですけど、ちょっと変わってきていますね。今はちょうど間というか、ファッションのトレンドが徐々に変化している時期で、もう少し女性らしさとコンテンポラリー感がミックスされているように感じます。

森岡祐介(以下M) : そうですね。ずっと流れとしてあったストリート感というよりは、みんながあたらしいものを探している感じだと思います。変わり目の時期なのかな。

E : 90ʼsから80ʼsに少しずつ移り変わってきていて、でも90年代と80年代の女性像って真逆とまでは言わないですけどカルチャーも全然違うから、そういった点でも今は大きく変わろうとしている時期だなと思います。正しく言えばもう変わったのかも。

M : そうですね。ヘアのトレンドも結構変わってきていて、ストリートが流行っていた時は人物像としてどうしても“リアルにいる人”を求められていたんですけど、今はもう少しプラスアルファの何かを欲しがっている感じですね。女性像もかなり変わりました。

E : 少し前は撮影のシチュエーションもロケーション撮影でイージーに撮ったりとか、写真自体も決め込んだライティングでバチっと撮るよりはスナップショットみたいなものが主流だったと思うんですけど、今はもう少し「服をちゃんと見せましょう」とか「女性像をはっきりさせましょう」ってところが重要になっているのかな。ファッションシューティングの原点というか、ムードもちゃんと作って、シチュエーションやライティング、いろんなことを考えて撮影するようになってきてるなと思います。

M : 少し前まで多かったナチュラルなライティングでの撮影だと、人物像やヘアの質感とかも結構ドライで整髪料もそんなに付いていないような軽い質感を求められていたんですけど、今はそれ以前の流行だったビッグヘアがまた流行ってきたり、ヘッドピースみたいなものでプラスアルファを加えたり、色の使い方だったり、いろいろな要素がぐちゃぐちゃに混ざってきている印象です。

E : 混ざってきていますよね。わたしのアシスタント時代も結構ジェルをつけたり、作り込んでたり、ぎゅっと詰めたヘアが多かったけど、そこに戻るわけではなく、でもなんとなくそっちの方向に向かっているのかな。ただ、見たことのないものを作りたいな、とはいつも思っています。

M : すごくわかります。自分の経験を通して考えると、一番大事なのは“作り込み過ぎない”ことなのかなと思いますね。流行がビッグヘアに戻ったとしてもそれを“どんな風に崩せるか”を考えたい。

E : あたらしいバランス感ですよね。

M : そうですね。

E : 写真で見るヘアと実際に作ったヘアってコントラストがでるから、それが撮影の面白さでもあるし。やっぱりそれを考えてテクスチャーも決めなきゃね。私もヘアメイクがすごく好きで、すごくこだわりたいっていつも思ってるんですよ。やっぱり女性像はヘアスタイルで決まりますもんね。例えば今季の「リチャード・クイン」のショーのヘアも、今まではモデルがマスクを被っていてプラスティックなイメージだったものが、シーズンが変わって急にグラマラスなビッグヘアになっていて。「ちょっと変えてきたんだな!」って。ちょっとした変化だけど、雰囲気を変えられるのがヘアの力なのかな。

M : そうですね。やっぱり人物像を一番変えられるのはヘアなのかなと思います。もちろんメイクも。メイクとヘアのバランスですね。

E : もしもわたしが今日と同じファッションだったとしても、ワンレンのロングヘアで、リップもすごく濃いのとかして、イヤリングもゴールドのもの付けたら全然違うキャラクターになるよね。

M : 見た目の印象で性格まで想像できちゃいますよね。

E : そうだよね。あと、ロンドンに来てからのことなんですけど。ファッションとサスティナビリティってすごく大事な関係だなと強く感じるようになりました。もちろんずっと前から言われている事なんですけど、ファッションって大気汚染とか環境を壊したりすることの原因になってしまっているので、環境に優しいものづくりをしなきゃいけないなって。最近は多くのファッションブランドもフェイクファーを使って、リアルファーを使わないようになってきていますよね。あとは、再利用した素材で洋服を作ったりすることも増えてきて、今までってそんなことまで意識してなかったと思うんですけど、今は「地球環境をもうちょっと意識しましょう」っていうところがファッションにおいてすごく大きなポイントになっている気がします。日本でどのくらい浸透しているかはまだわからないですけど。わたしはロンドンに来て、チャリティーショップの多さとかストローを廃止するときの勢いとかがすごく目に止まったんです。もし日本に帰ったらファッションの仕事をやりながらも環境のことを考えられるような動きをしたいなと思っています。「そういう意識を持ったブランドしか紹介しない」とかではないですけど、むしろそれを考えないでクリエーションはできなくなるんじゃないかなと思っています。それがわたしたちが作るヴィジュアルにどのように反映されていくかはまだわからないですけどね。すごく大きな変化として感じてます。

――おふたりにとって今、ミューズと呼べるような女性はいますか? また、おふたりがどんなことからインスピレーションを受けているのか教えてください。

E : ミューズになっている女性って常にいないんです。作り込まれた世界観のあるファッションブランドのルックブックの撮影などの場合は、いろいろな要素をリンクさせて自分の中でミューズを考えたりはするけれど。いわゆるセレブみたいな人をミューズにして撮影することはないかな。それよりは昔の芸術家の奥さんとかペインターの女性とか。ギャラリーやミュージアムに行って気になった作品をキャプチャーして、家に帰ってからまた調べ直して、そこに関係しているパートナーとかを探して見たり。基本的にはアートを見てイメージすることが多いですかね。あとは旅に出て、建築物を見たりもします。

M : 僕が「クリスチャンダダ」の2019SSのショーのヘアを担当した時は、デザイナーさんから言われたテーマが「Diversity(多様性)」だったので、それを踏まえて自分なりに考えて“ちょっと未来っぽい多民族感”っていうのを意識して作りました。モデルのキャスティング的にもバラバラなキャラクターだったので、それぞれの人に合った個性を活かしたいなと思いました。

E : キャラクターのある子を使って、それを“どう活かすか”ってことが重要だよね。

M : 最近のキャスティングはそうですよね。

E : ミューズの話じゃないですけどやっぱり、「見たことのない子がファッションの世界に入ってる」っていうのがファンタジーになっている時代なのかな。だけど、それも変わっていきそうですけどね。

M : 今だとその人のバックグラウンドに合わせた個性を出していたところが、逆に次は黒人の人があえてすごいストレートヘアだったりとか、白人の人がドレッドだったりとか、日本人が全然違う感じの髪型をしたりとか。もっとミックスしていく感じがこれから先は面白くなっていくのかなと思いますね。

E : そうですね。

M : いろんな人がいますけど、今はなんでもありの時代じゃないですか。女の人が坊主でもいいし、男の人がロン毛でもいい。

E : 音楽といっしょでいろんなジャンルが出尽くしたって言い方はちょっとアレかもしれないですけど、みんな一通りいろんなものを見て、SNSがあって、誰でもなんでも見れる時代じゃないですか。その中でどうやってわたしたちはあたらしくてもっと楽しいファッションを作れるのかって考えると、どんどんいろんなものをミックスして、モダンに見えるものを探していくしかないのかなと思いますね。これまで以上に情報量が必要になってきている気がします。

M : みんなが簡単に情報を見れる分、移り変わりも早いですよね。その分、飽きるのも早いけど。

E : 早い早い! モデルもそうなってしまっていますしね。そのあたりが音楽といっしょなんだと思う。だからわたしはアートを軸にしたものが好きで、美術って何年も前に作られたものなのに今見てもすごくモダンに思えたりしますよね。その感動ってもちろんファッションにもありますけど、わたしは圧倒的に美術から感じることが多いんです。だからファッションでもそんなものが作れたらいいなって。何年経ってもいいって思えるようなものを作っていきたいですね。

遠藤彩香 ファッションスタイリスト

1982年生まれ、ショップ店員を経てスタイリストMORIYASU氏のアシスタントに。2009年に独立後は国内外のハイファッション誌を中心に活躍。独特な感性と、アートへの高い知識で作るエディトリアルが魅力。現在はロンドンをベースに活動中。

森岡祐介 ヘアスタイリスト

ロンドンをベースに活躍するヘアスタイリスト。Dazed & Confusedや、ELLE UKなど数多くのファッション誌を手掛け、グローバルに活躍中。PERK11月号では感性豊かなビューティエディトリアルを手掛け日本でも多くの支持を集める。

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