「malamute」 Designer /
MARI ODAKA

小髙真理さんの画像

“強さとやわらかさを併せ持つ女性像”をコンセプトにしたブランド「マラミュート」のデザイナー、小髙真理さん。「テクスチャーや経年変化に惹かれます」と話す彼女が手がけるのは、日本の巧みな技術により独特のフォルムや陰影を演出するニットウエア。創造性と意外性が共存したものづくりのアイデアソースを教えてもらった。

Things_01『Panamarenko Universum』

Panamarenko Universumの画像

「幼い頃から飛行機や飛行船の模型を眺めるのが好きで、もっとカラフルだったら可愛いのにと、イメージを膨らませていました。これは飛行物を題材にした芸術家、パナマレンコのアートブック。細部までつくり込まれているにも関わらず、彼の作品はすべてプロトタイプで終わっていて、実際はどれも飛ぶことができませんが、SF映画に出てくるような外観がかっこいいんです。どこか幼少時代のワクワクと重なって、想像力をかき立てる壮大なロマンを感じます」

Things_02映画『コーヒー&シガレッツ』

映画『コーヒー&シガレッツ』の画像

「コーヒーを片手に一服する2人の様子を切り取った、11の短編からなるオムニバスムービー。ミュージシャンのトム・ウェイツやイギー・ポップが出演するなど、豪華なキャストも魅力。ストーリーはごくシンプルですが、他愛のない会話がダラダラ続くとりとめのない時間こそ、愛しいものだと気付かせてくれる作品です。モノクロの世界観や美しい画角にも、イマジネーションが刺激されます」

Things_03二枚貝の化石

二枚貝の化石の画像

「小学3年生の頃に訪れた海岸で拾って以来、ずっと大切に持っている二枚貝の化石。実は一万年以上前のものみたいで、ゴツゴツしているように見えるけど、長い年月をかけて研磨されたおかげで表面はツルツルなんです。このなんとも言えない触り心地が気に入っていて。今はアトリエに置いて、仕事が行き詰まった時に眺めたり質感を確かめたりしながら、太古の地球に思いを馳せています」

Things_04『アンリ・マティス 切り絵』

アンリ・マティス 切り絵の画像

「こちらはフランスの画家、アンリ・マティスの切り絵の作品集。なかでも女性のボディラインを表現した『ブルー・ヌードⅡ』は、今季のコレクションの貴重なアイデア源。この美しいラインをニットで表現したくて辿り着いたのが、ホールガーメントという無縫製の手法でした。隣のシアーなトップスは、サイドの縫い目をなくすことにより身体のシルエットの美しさを引き立ててくれます」

Things_05『女生徒』太宰治

『女生徒』太宰治の画像

「とある中学生の日記を基にしたこの物語は、読むたびに思春期の甘酸っぱさが蘇ります。何より、ディテールやテクスチャーを伝える表現が秀逸で。特に好きなのは“キュウリの青さから夏が来る。5月のキュウリの青みには、胸がカラッポになるような、うづくような、くすぐったいような悲しさがある”という一文。キュウリでここまで表現できるのかと感動しました。佐内正史さんの写真も素敵です」

PROFILE

小髙真理/埼玉県生まれ。2011年に文化ファッション大学院大学を卒業後、アパレルメーカーのデザイナーに。14年秋冬よりニットウエアをメインとした「マラミュート」を立ち上げ、伝統的な技法を落とし込んだコレクションを展開。17年、Tokyo新人デザイナーファッション大賞受賞。
Instagram_@malamute_iii_knit

「lili by SERI」 Designer /
SERI TANAKA

田中芹さんの画像

古着好きの田中芹さんによる「リリバイセリ」は、“リリという寂しがり屋の女の子がつくるアクセサリー”がテーマ。「私にとってアクセサリーは、あくまで服を引き立てるもの」と話す彼女のプロダクトは、古着を取り入れた個性的なコーディネートにもすっとなじんでくれる。そんな田中さんがインスパイアを受けるモノについて尋ねた。

Things_01'50sのヴィンテージ
ビーズカーディガン

'50sのヴィンテージビーズカーディガンの画像

「中学3年生の頃にハマって以来、古着の魅力に憑りつかれています。20歳くらいの時にひと目惚れしたハンドメイドニットは、繊細なビーズワークとヴィンテージならではの風合いがたまらなく素敵。数あるなかから自分の感性に合うアイテムを見つけ出すのが楽しくて、『これだ!』という一着に出合えた瞬間の胸の高鳴りは言葉にできないほど。古着は、いつも私にときめきを与えてくれる存在です」

Things_02ヘレン・ファン・ミーネの写真集
『The Years Shall Run Like Rabbits』

ヘレン・ファン・ミーネの写真集 『The Years Shall Run Like Rabbits』の画像

「オランダのフォトグラファー、ヘレン・ファン・ミーネの作品集。彼女の被写体の多くは子供らしい無邪気さをたたえた思春期の少女で、その時期ならではの儚さと憂い、危うさを併せ持つ独特の佇まいが印象的です。昔から純粋に可愛いものより、少し不完全で毒気のあるものに惹かれてしまうところがあって。オンラインショップやフライヤー用の作品撮りをする際、その世界観を参考にしています」

Things_03「パコ ラバンヌ」のミニバッグ

「パコ ラバンヌ」のミニバッグの画像

「ずっと憧れていたスペインのブランド『パコ ラバンヌ』のPVCバッグは、昨年本格的にアクセサリーづくりを始めた記念に購入。花びらが幾重にも連なったような立体的かつモダンなデザインに、古着とはまた違った魅力を感じました。鮮やかなオレンジが差し色となり、コーディネートをグッと引き締めてくれると同時に、このバッグを身に着けると初心が思い起こされて気持ちが奮い立ちます」

Things_04ヴァルター・ファイファーの写真集
『In Love With Beauty』

ヴァルター・ファイファーの写真集 『In Love With Beauty』の画像

「表紙のビジュアルにビビッときて思わずジャケ買いした、スイス人フォトグラファーのヴァルター・ファイファーによる写真集。男性の裸体をはじめとしたエロティックな作品が多いのですが、そのどれもが不思議なほどいやらしさを感じさせず、ポップでハッピーなムードと共に表現されていて。作品撮りの参考になるのはもちろん、彼の美しい色彩感覚にもクリエイティビティが刺激されます」

Things_05アンティークのテディベア

アンティークのテディベアの画像

「これらは私の愛するテディベアコレクション。ちょっと崩れていてあどけない表情のものを見つけると、つい集めてしまいます。『リリバイセリ』にも大好きなテディベアをモチーフにしたアクセサリーがいくつかあって。ブラックビーズのみを使用してシックな雰囲気にしたり、ドレススタイルに映えるよう華やかなフォルムにしたり、可愛くなりすぎないよう工夫しながらデザインに落とし込んでいます」

PROFILE

田中芹/大阪府出身。服飾専門学校卒業後、2015年に独学で技術を習得し、ハンドメイドのアクセサリーブランド「リリバイセリ」をスタート。当時はOL業と両立していたものの、昨年退職。本格的に制作活動に打ち込み、現在は各地を飛び回りながらポップアップを開催。
Instagram_@lilibyseri