SUSTAINABLE
FASHION
ゼロ年代とともに本格的に歩み始めた!
サステイナブルなファッション
地球温暖化や海洋汚染などによる環境破壊は今日、世界で最も議論されるべき問題のひとつ。この問題に対して、2020春夏コレクションでは多くのブランドがサステイナブルな取り組みを実践してきています。自然に回帰したネイチャーなメッセージとともに、服作りの工程から、コレクションが開催されるショーの会場作りのプロセスまで、ファッション業界全体が本格的にサステイナブルな方向へと変化をし始めました。ファッションは、いつもその時代を映し出すもの。環境問題に真摯に向き合うブランドの取り組みを今季のコレクションの中からピックアップして紹介します。
持続可能なファッションを訴えた
ステラ・マッカートニーの信念
本格的にファッション業界全体が“未来の地球環境に向けて、どのように持続可能にファッションを楽しんでいくのか”について取り組み始めている昨今。この問題に対して2001年のブランド創設当初から真摯に向き合いながらコレクションを発表してきたデザイナーが存在します。あのポール・マッカートニーの娘でもあるステラ・マッカートニーです。フェミニンかつ都会的なデザインで世界中の多くの女性を魅了し、動物保護、草食主義というストイックでエシカルな信念を貫く彼女の存在はサステイナブルを語る上で欠かせません。
彼女は毎シーズン、革新的な手法で環境に優しいコレクションを数多く発表しています。例えば菌糸体で作られたレザーの代替素材「Mylo」を使用したチェーンバッグ「ファラベラ」や、本物と見間違えるほどクオリティの高いファー風素材「ファーフリー ファー」のコートなど。動物由来の原料を一切使用しないという徹底ぶりは近年のファッション業界の在り方を少しずつ変え始めました。同時に、「リアルレザー」、「リアルファー」が“高級なもの”とされていた時代の固定概念を見事に覆し、私たちに新たな価値観を提示してくれたのです。その他にも、廃棄物を再生したカシミアや、有毒化学物質や難分解性化学物質を使用しないオーガニックコットン、先駆的なバイオテクノロジーを活用したシルクを開発するなど、彼女の強い信念で作られた服は、今のファッション業界のサステイナブルな取り組みの基盤となったと言っても過言ではありません。
環境に配慮しながらもファッションのクリエイティビティを磨き続ける彼女の高い志は、多くのメゾンブランドをはじめ、地球環境保護団体からも賞賛され、今や世界中で最も注目されるブランドへと成長しました。この2020年代の幕開けとともに地球環境へ配慮したファッションの楽しみ方に改めて向き合い、ステラの姿勢をお手本に私たちも小さなことから地球に優しい取り組みを行っていきましょう。
自然モチーフが視覚的に表現され
力強いメッセージを未来に向ける
サステイナブルな素材の割合をついに75%以上まで引き上げることに成功したというステラ マッカートニーの2020春夏コレクション。力強いプリントや太陽、動物、自然のモチーフがたくさん登場したコレクション内容は「責任を持ち、誠実であり、現代的な会社であること」というブランド信念とともに未来に向けたポジティブなメッセージが伝わってきます。
PHOTO_Aflo, Getty Images
NEWS 01
ショーでも環境保全をアピール
メゾンのサステイナブルな会場装飾
2020春夏のパリファッションウィークでは、環境に配慮する取り組みがショー会場でも見受けられました。「ディオール」は、パリのロンシャン競馬場に設置したテント内に種類が異なる164本の木々を配し、ランウェイに森を再現。このショー会場は園地栽培に取り組むアーティスト集団「コロコ」と協業したもので、使用された木々はパリの街へと移植し、緑を増やすプロジェクトに。美しい自然とその未来を守るメッセージがショー会場全体から伝わってきます。また、ルーヴル美術館の中庭に設置された「ルイ・ヴィトン」のショー会場は、背景の巨大スクリーンを主役としたナチュラルでミニマルなデザインが印象的でした。こちらも床をはじめ、会場に使われた木材はすべてサステイナブルな環境で管理されたフランスの森から採取されたもの。ショーが終わった後はすべて再利用。観客席を囲ったウィンドウやLEDも同様です。伝統を受け継ぐメゾンブランドが会場装飾でも様々な手法で地球環境に配慮し、ファッションウィークの新しいサステイナブルな在り方を定義していました。
NEWS 02
自由でエシカルなアイディアで
未来の地球に向けた服作りを
未来を重要なテーマとしてコレクションを発表している「クレージュ」。特に今季のコレクションで注目されたのが、ユニークでエシカルな素材選びでした。ブランドアイコンでもあるビニール生地を藻類やマッシュルームから取れる成分で新たに開発し、従来のものより石油成分を90%削減。他にもフーディジャケットのショルダー部分に施された素材は、捨てられていたピラルクーの皮を採用。少しずつ漁獲されたものをクレージュが高値で買い取り、その対価を漁業組合に支払うことで大量に獲らずとも生活が成り立つ様にビジネスを安定させている。また、ゴールドのバッグには廃棄されることの多いパイナップルの皮を使用。環境に配慮したサステイナブルな素材へと変換し、ファッショナブルなプロダクトを生み出していました。自由でエシカルな発想で作られた服が未来にどんどん増えていくことを期待せずにはいられません。
ジャケット¥320,100(COURREGES/エドストローム オフィス TEL_03-6427-5901)
NEWS 03
自然にも身体にも優しい
ピュアなリップブランドが登場!
2019年の秋、日本に初上陸したパリ発のリップスティックブランド「ラ ブーシュ ルージュ」。同ブランドはサステイナビリティを重視し、海洋汚染の原因となるマイクロプラスティックを、プロダクトを作る工程で一切使用していません。また、蜜蜂保護につながる蜜蝋不使用のリップスティックの開発に世界で初めて成功。さらに、年間約10億本のリップスティックが世界で廃棄されているという事実を受け、ベジタブルタンニングレザーを使用したケースに防腐剤、動物性油脂などが一切含まれていないリップスティックとセットで使う詰め替え式を採用しているのです。プロダクトを作る工程でも一切プラスティックを使用しないという徹底ぶり。パッケージを含むデザインのディレクションは雑誌「self service」を手がけるエズラ・ペトロニオ氏が担当し、ラグジュアリーな佇まいも魅力のひとつとなっています。未来の地球環境に責任を持ち、次の世代へと受け継いでいくという素晴らしいビジョンを抱え、身体にも優しいこの革新的なリップスティックをすぐにでもバッグの中に忍ばせておきたい。